新規事業の実践論(1/2)

「社内起業」こそ、最高のキャリア戦略だ。

第1章 日本人は起業より「社内起業」が向いている

なぜ日本で起業家が増えないのか
  • 日本人が『社内起業』に向く理由は、政治的構造に由来している。
  • 日本は、アメリカや中国とは、起業家輩出の背景が異なっている。
国名 起業の背景
アメリ 企業が簡単に社員を解雇する。社員は自身を守るために、自律的にキャリアを考え、転職し、起業する。これが定着しており、起業家の絶対数が増えていく。比例して起業家のレベルが上がっていく。スタートアップ企業中心の社会である。
中国 共産主義であり、政府が企業をバックアップする。政府主導でイノベーションを推進している
日本 資本主義であり、中国のように政府は企業を主導しない。政治構造的にも労働者が手厚く守られており、会社をやめてまでスタートアップしない(する必要がない)→スタートアップは増えない
  • 日本でスタートアップが増えないのはイノベーションへの害悪か。→ No。「失敗しても生活は揺るがないから、企業にいながら進んでリスクを取ることができる」とも言える。
  • 日本でイノベーションを実現する母体は『政府(中国)』でも『スタートアップ(アメリカ)』でもなく、『社内起業』が最も適しているという事実。
なぜ日本でイノベーションが減ったのか

第2章 「社内起業家」へと覚醒するWILLの作り方

WILLの定義

WILL(意志)の強さと明確さを評価する基準は以下の3つ。

  • Q1. 誰の(課題を解決するのか) ← 領域の明確化①
  • Q2. どんな課題を(解決するのか) ← 領域の明確化②
  • Q3. なぜあなたが(解決するのか) ← 圧倒的当事者意識

3つの評価基準に至る成長過程を「原体験化」と(筆者は)呼んでいる。

ゲンバとホンバ、2つの行動で「原体験化」
  1. ゲンバに触れて対話する

    • 課題の震源地(発生源)に足を運べ
      • 震災のボランティア
      • 介護施設の現場
      • 一次産業の現場
      • 民泊トラブルの現場
    • 日本のサラリーマンはゲンバに足を運ばない。やりたいことが見つからないのではなく「見てないし、知らない」のだ。
    • NPOボランティア、カンファレンス、イベント参加など、方法はある activo.jp
  2. ホンバを訪れて刺激を受ける

体験したことをアウトプットする
  • 誰かに感動をコメントする。
  • コメントついでに「小さな約束」をする。

「小さな約束」をすることで、自身をつぎの行動に後押しし、結果を生み出す好循環が生まれる。

第3章 最初にして最大の課題「創設メンバーの選び方」

『人数』の王道

3人以下が王道であり、4人以上にしない方がよい。

人数の観点は以下の3つである。

  1. コミュニケーションスピード(少ない方がよい)
    人数が増えればコミュニケーションは『指数関数的に』複雑になる。2人なら1だったコミュニケーションパスが、3人なら4倍に、4人なら11倍になる。調整にも時間がかかり、情報が共有しきれない。1人が最強説。
  2. チームレジリエンス・くじけぬ心(多い方がよい)
    ダメだしに折れない。挫折にくじけない。スクラムでチーム力向上。
  3. マンパワー(多い方がよい)
    業務をさばける量。人数が多ければ『比例的に』高まる。

新規事業の立ち上げでは、情報共有が超重要。共有はデイリー(daily)ですらなく、アワリー(hourly)である。そのスピードに対応するには、5人は多すぎ。情報共有と、会議調整するだけ時間がムダ。

『役割』の王道
  • 創設メンバーで何の役割を果たし、何の役割を外部に委託するかを決める。数ある役割のうち「外部に委託しえない役割」こそが、新事業における「競争優位性の源」となる。以下に例示。
    • システム開発を外部に委託できる
      ビジネスモデルの先進性やUX・デザインが優位性
    • システム開発を外部に委託できない
      システム自体に差別化を備えている
『人数』と『役割』以上に必要な『3つの力』
  • Network(異分野をつなぎネットワークする)
    名刺交換の力ではない。異なる異分野・異業種の人たちとゼロから人間関係を構築する力が必要
  • Execution(圧倒的にやりきる力)
    マネジメントを含めた実行力(割愛)
  • Knowledge(深く広い知識と教養)
    新たな業界との対決では「無知の知」(何をしらないかを知る力)が必要。そのためには基礎教養と、個別の知識が必要であり、業界慣習や歴史、関連法規などを知らねばならない。これからのリーダーは哲学・宗教・科学・化学・数学・美術・歴史・倫理学、経済・金融・生命科学・宇宙科学などの知識が必要である