新規事業の実践論(2/2)

「社内起業」こそ、最高のキャリア戦略だ。

第4章 立ち上げ前に必ず知るべき新規事業6つのステージ

新規事業の立ち上げで『してはいけない』質問
  • 案に具体性がない
  • 儲かるのか
  • 市場性が見えない
  • 当社で取り組む意義がわからない
  • 事業の目新しさが感じられない
  • 上記は「既存事業」の評価としてはまっとうな経営判断である。
  • 新規事業を、最初から既存事業と同じステージで評価してはならない。
6つのステージ
  • 新規事業に必要な手順を下表に示す
    ※先のステージのことを先回りして行わないこと
    ※次ステージへの昇格基準の達成だけを目指すこと
No ステージ 内容 次ステージへの昇格基準
- WILL(誕生) おぼろげでも取り組みたい顧客課題を見つけ、そこへのWILLの形成を目指す段階 WILLが強いか、強まりそうか/走り抜けるチームかどうか
1 ENTRY期 魅力的で検証可能な事業仮説の提示を目指す段階 顧客・課題・ソリューション仮説・検証方法のセットが成立しそうか
2 MVP期 事業性を伴った魅力的な事業計画の提示を目指す段階 仮説が実証されているか投資可能な事業計画か
3 SEED期 商用レベルでの事業の成立とグロースドライバーの発見を目指す段階 実際に商売が成立したか成長のための拡大方法が見えたか
4 ALPHA期 実際にビジネスが最初のグロースを実現することを目指す段階 事業が成長状態に入ったか/組織戦略と対競合戦略が現実的か
5 BETA期 経営会議で議論できる最小限の規模に到達し、かつ成長状態であることを目指す段階 成長率を落とさず成長状態が続くか/既存事業と遜色ないガバナンスか
6 EXIT期 新規事業の枠組みを卒業し、成長投資を獲得し、企業戦略の一部に組み込まれることを目指す段階 社内での位置づけ整理・IR戦略/既存事業を凌駕する規模への投資戦略
- Company(卒業) 既存事業と呼ばれる段階 -
ENTRY期
  • このステージでは事業仮説を構築する。以下の4つの要素を揃えることが必要。
    1. 顧客
      課題を持つ「誰か」を定める。ペルソナによってリアリティを。
    2. 課題
      顧客が持つ、お金を払ってでも解決したい、根深い課題。そこまで根深くない課題を、事業成立を優先して曲解しないこと
    3. ソリューション仮説(解決方法) それをやったら本当に課題が解決する解決方法を定める。この時点では実現可能性を追いすぎないこと。
    4. 検証方法 「予算」と「期間」の制約をクリアする、こうすれば実証できるという方法論を確立すること。
  • ステージクリア条件は『1.たしかに存在しそうな顧客が、2.たしかに存在しそうな根深い課題を持っていて、それはその3.ソリューション仮説によって解決しそうであること。さらにどうやったら4.期間内、かつ予算内で検証できそうか、プランにイメージが持てること』である。
  • 上記4つ以外は揃えなくてよい。以下のような要素はステージ2以降に揃えること。
    • 市場調査
    • 競合
    • 実現可能性
    • 事業計画
    • 収益
MVP期
  • Minimum Viable Product(検証可能な最小限の製品)の略。つまり仮説検証期。
  • このステージでは以下2つを実施する。
    1. ENTRY期の事業仮説を実証すること
    2. 事業計画として成立させること
  • 1.事業仮説の実証では、課題を持つ顧客を実際に見つけ彼らにソリューション仮説の検証をさせてもらうことが必要。
    あらゆる手段(※例)で対象者にたどり着き、実際にその顧客がいると証明すること、検証を経て課題が解決され、お金が支払われることを確認すること。
    ※例. 家族・友人の紹介、社内のネットワーク、SNS、代表電話への電話掛け、HPのメールへ問い合わせ、(予算があれば)インタビュー調査企業への依頼など
  • 2.事業計画の成立でやるべきなのは、以下の3点。

    No 作業 詳細
    売り方の設定と値付けを行う。 顧客がその課題解決にどこまで払えるかをヒアリング。100円か、1,000円か、10,000円か
    コスト構造の見積もりを行う。 変動費がいくらか、固定費がいくらか、見積もりする。
    時間軸を入れ将来的に儲かるかシミュレーションする ①と②から損益分岐点となる顧客数を確認。顧客数が到達可能かをシュミレートする
  • ステージクリア条件は『「顧客・課題・ソリューション仮説」が仮説どおりだったと実証され、そのために「顧客が支払う金額が提供コストよりも大きく、顧客数を拡大できれば大きな利益を生む」シミュレーションが成立すること』である。
SEED期 以降

まずはここまで到達することが必要。続きは到達後に。

第5章 新規事業の立ち上げ方(ENTRY期~MVP期)

ENTRY期~MVP期の落とし穴
  • ENTRY期からMVP期では確認・事例・調査・会議・資料・社内・上司・先輩・競合」の9つは、1つたりとも出現させてはいけない!
  • 必要なのは「仮説・顧客」の2つのみ!

どういうこと!?(笑)

  • 優秀なサラリーマンほど次の行動に出るが、いずれも新規事業ではNG。
    • 前提条件の整理&上司に今後の進め方を確認
    • 社内の他部署の事例収集
    • 市場調査という名のアンケート、浅いインタビュー
    • アイディア会議
    • 先輩や上司からのアドバイス
    • アドバイスを踏まえた会議室での議論
    • 業務工程の立案
    • プレゼン資料の作成
  • 上記は既存事業の業務では、非常に正しい行動。リスクを下げ、成功確率を上げるもの。そのため、殆どのサラリーマンが陥る落とし穴である。
  • 「仮説」を「顧客」で検証→「仮説」を修正。これを300回行うこと! (300回とは、6か月の制約時間では50回/月、2.5回/日に相当する)
  • そのためには、「上司に確認」とかは非効率である。
MVPの6Level
  • 1日2.5回ペースには、MVP(検証可能な最小限の製品)でやるしかない。
  • そのためのアプローチは、次の6Levelである。
Level 名称 時間 説明
1 Paper 30秒 コンセプトを表した30文字の言葉。画面を手書きで紙に書いたもの、ただの企画書など。想定カスタマーに見せるだけで検証できる
2 Analog 3時間 想定顧客を人力で集めて、課題に対してすべて手作りで応えてみれば、最小限のサービスが成立する(プロダクトは作らない。何も使わない)
3 Combination 12時間 Facebok、LINE、Twitter、ブログなど、既存の便利なサービスを組み合わせて使えば立派なサービスになる
4 Only Visual 1日 はじめて、オリジナルのビジュアルを作ってみる。Webならトップだけ。デバイスなら外側の見た目だけ、など。動かさなくていい。それを見せるだけで検証できる。
5 Prototype 3日 4まで検証出来たら、初めて動的なサービス検証に進んでよい。その場合も、まずは市販品(WebならWordPressなど)を使って最低限のものを作ることを考える
6 Minimum Viable Product 数日 5まで検証出来たら、はじめて必要となる機能セットを揃える開発を始めてよい。それでもできる限り「作らなくて済む」方法を考える
  • 後半に行くほど時間がかかり、1日2.5回は回転できなくなる。平均 1日2.5回とするには、Level1の時点で1日10回は顧客に当たる必要がある。全員で手分けして、当たりまくれ!
意味のある市場規模のシミュレーションをする
  • SEED期昇格に必要な「儲かるシミュレーション」では、そのビジネスを最大限成長させたときのシミュレーションをすること。
  • 市場全体の数字や記述を上げても意味がない。
    悪い例 2014年度における介護サービス市場の規模は8.6兆円。2025年を迎えるころには18.7兆円と、倍以上の額にまで到達する見込みである。
  • 「理論上到達可能な最高売り上げ」を求めるべし。
     理論上到達可能な最高売り上げ =
       いち顧客あたりの平均売上/年 × 理論上到達可能な最大顧客数